目をあける。ガラスが目の前で、外と私の空間を遮っている。外では、人が私をじろじろ見ながら歩いて通りすぎる。いつものことなので、気にすることではない。物心がついた頃からそうであった。このガラスで外の世界と隔絶された空間で生活している。
目をあける。目の前にプールがある。プールの外から、人がこちらをじっと見てくる。泳ぐ私の姿が見たいのかもしれない。私にとってはすこし狭いが、それは私が大きくなったからかもしれない。今日もプールをグルグルと泳ぎ回る。たぶん、明日も明後日も。
目をあける。目の前には、柵がある。私は柵の内側にいる。外では人が歩いている。騒がしいので陰に身を潜める。朝から晩まで、こんな生活である。たまに、柵に近づいて人間を観察するが、代わり映えしない。騒がしいので、陰にもどる。
目をあける。まだ昼のようだ。上を見上げると人が私たちを見下ろしている。気にしてもしかたがない。いつものことだ。そんなに私たちを見て面白いのだろうか。私たちもそれなりの数だが人もそれなりの人数がいる。世界には、どのくらい人がいるのであろう。
目をあける。すぐそこに人がいる。溝があるため、こちらに来ることはできないようだが、その程度の隔たりしかない。もし私が飛べたら、すぐに超えられそうな幅である。私から見たら、人は小さい。鼻も短い。
目をあける。去年とは、別のグループに無理やり入れられた。なかなか慣れることができない。人とは勝手だ。私はそんなこと望んでいない。前にグループに戻りたい。しかし、どこから来たのか、ここはどこかも分からない。
目をあける。昔の夢を見ていた。以前は私と世界には境界がなく、世界を延々と続いているものだと感じていた。しかし、今はそうではない。走り回ろうにも、すぐに私の世界の端に辿り着く。しかし、飯に困ることはなくなった。
目をあける。外では人が仕事に向かっている。私も仕事に向かうことにする。仕事場ではたくさんの種類の生き物がいる。私も生き物の一種である。
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