もう30回以上、夏を迎えている
焼けつくような日差しが照りつけ、田んぼには今年も水が張られ、稲が青々と揺れる
幼い頃、母と二人で水面に顔を近づけ、オタマジャクシを眺めていた日を思い出す
オタマジャクシに頃には、水中しか知らない
蛙になれば、水中の記憶は薄れ、陸の乾いた空気と土の匂いを知ることになる
人もまた同じだ。子どもの頃の世界は、掌に収まるほどに狭く、そこにある全てが絶対だった。
大人になるにつれて、世界は広がり、選択肢は増え、複雑な社会が押し寄せる。
それが幸せとは限らない。
あの、母とオタマジャクシを眺めていた日の方が、ずっと幸せだった。